2026年3月

親は、成功した子どもより、失敗して帰る子を待つ

3月は、卒業のシーズンでもありますし、また受験のシーズンです。

 

受験と聞くと、ある女性の先輩のことを思い出します。

 

 大学落ちた。
 悲しくて、ショックだった。
 友達の前では、平気なふりをした。格好悪いと思ったから。
 帰り道に思った。親に何て言えばいいのか。何も思いつかなかった。
 友達の前と、同じことしかできなかった。
 家族の前でも、平気なふりをした。格好悪いと思ったから。
 でも、その私を見て、母が号泣した。私を抱いて、わんわん泣いた。
 私も泣いた。格好悪いと思った。
 でも、これでいいと思った。
 悲しくて、ショックだったけど、嬉しかった。

 

そんな話をしてくれました。

 

「悲しみは、悲しみを知る悲しみに救われ
  涙は、涙にそそがれる涙にたすけられる」
お東のお坊さま、金子大栄師の言葉です。
その言葉を体現したようなエピソードでした。

 

世間では、成功した人は、受け容れられます。
成功者の周りには、人がたくさん集まり、笑顔であふれ、多くの称讃が飛び交います。

 

ですが、失敗した人の居場所は、とても少ない。
誰もかける言葉を持たず、ただ距離を置くことしかできません。

 

ですが、その時こそ、親の役割がはっきりするのかもしれません。

 

世間とは違う、親にしかない、親にならできる役割。
それは、失敗した子どもを、遠ざけるのではなく、むしろ抱きしめ、先に泣いていくような、そんな役割。
世間とは一線を画す、親にしかできない、親らしいこと。

 

それが、この度の掲示板の言葉だと感じます。
「親は、成功した子どもより、失敗して帰る子を待つ」

 

阿弥陀さまという仏さまは、まさに親らしい仏さまです。
人間ができていて、前向きで、礼儀正しく、人に迷惑をかけず、努力できる。
そんな人間に、用事はないとおっしゃいます。

 

そうありたいけれど、そうあれない。
ドロドロしたものを抱えてしか生きられない。
誰にも言えない弱さを抱え、誰にも言えない辛さや悲しみを抱える者にこそ、
ご一緒くださるのが阿弥陀さまです。

 

ひとりじゃないよ。ひとりじゃないよ。
そのぬくもりを、お念仏でいただきます。

 

称名相続

2026年2月

「神も仏もあるものか」
 ここから宗教が始まるようです。

宗教とは、中心となる(宗)、教え(教)。

 

言わば、私の人生を、その中心でしっかり支えてくれる、決して折れない杖です。

 

浄土真宗の私たちにとって、その折れない杖とは、南無阿弥陀仏であり、それはつまり阿弥陀さまという存在そのものです。

 

楽しい時も、嬉しい時も、苦しい時も、悲しい時も、いつもご一緒くださる阿弥陀さまを、南無阿弥陀仏のお念仏としてわが身に聞いていくことができます。

 

もしも、自分の人生が順風満帆に進んでいるときには、宗教は、特に意識する必要がないのかもしれません。
宗教という支えがなくても、自分を支えてくれる「何か」があるからです。

 

それは「若さ」かもしれませんし、「健康」かもしれません。
「家族」かもしれませんし、「友人」かもしれません。
もっといえば、「お金」や、「社会的地位」かもしれません。

 

確かにそれらは、私の人生を支えてくれる大切な「杖」です。
「杖」が多いほど、強いほど、自分を支えてくれます。

 

ですが、それらの杖は、いつか必ず折れます。
月日が経ち、歳を重ね、いのち終っていかねばならないこの人生においては、一つずつ、確実に、折れていきます。

 

その時に出る言葉が、「神も仏もあるものか」ではないでしょうか。
そしてその時に、「折れない杖」とは何なのか、「宗教」とは何のかが、始まるのかもしれません。

 

今まで大切にしてきた杖が折れていき、人生が終わる時、そのいのちをなお支えてくれる杖こそが、南無阿弥陀仏の阿弥陀さまです。

 

人生の最期、なおご一緒くださる阿弥陀さまが、教えてくれます。

 

この人生はね、決して空っぽではなかったんだよ。
お慈悲いっぱいで満たされた人生だったんだ。
死は、絶望ではない、滅びではないよ。
懐かしくあたたかなお浄土へ生まれ、仏さまと成って大活躍していく、そんないのちの始まりなんだ。

 

そんな尊い尊い南無阿弥陀仏を、今いただいている。
尊い尊い人生を、今歩んでいる。
これ以上ない宝物、南無阿弥陀仏が、決して折れない杖として、今この口元にご一緒です。

 

この1年も、そのことを大切にお聞かせいただきましょう。

 

称名相続

【住 職】 園 淵 和 貴  【前住職】 園 淵 和 夫
【住 所】 〒555−0001 大阪市西淀川区佃1−11−3
【電 話】 06 ( 6471 ) 6330
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